エレベーターを安全に使い続けるためには、保守点検を適切な頻度で実施し、機器の性能や安全装置が正常に作動しているかを確認することが欠かせません。
しかし、「どれくらいの回数で点検すべき?」「法的な義務はある?」と疑問を持つ管理者やオーナーも多いはずです。
結論として、エレベーターの点検には建築基準法に基づく年1回の法定点検が義務付けられており、これとは別に月1回程度の保守点検を行うのがおすすめです。
本記事では、エレベーターの保守点検の頻度の目安や点検内容、業者の選びのポイントまで、くわしく解説します。
管理者ができる日常点検のポイントも紹介するので、エレベーターの維持管理に必要な情報を知りたい方はぜひ参考にしてみてください。
エレベーター保守点検を定期的な頻度で行うべき理由

エレベーターはマンションやオフィスビル、商業施設などで多くの人が利用する建築設備であり、わずかな異常でも重大な事故につながる可能性があります。
例えば、点検を怠ることで閉じ込め事故や突然の停止などのトラブルが発生しやすくなり、結果として修繕費が高額になったり人命に関わったりする可能性もゼロではありません。
国土交通省のホームページによると、平成24年から令和7年までの13年間で戸開走行事故だけでも20件発生し、死傷者も出ています。
エレベーターは「壊れてから直す」のではなく、「異常を未然に防ぐ」ための定期点検を徹底することで安全性と性能を維持できると理解しておきましょう。
エレベーター保守点検の法的義務と基本頻度

エレベーターは「昇降機」として建築基準法の管理対象となっており、所有者や管理者には安全性を維持するための法定点検を年に1回行うことが法律で義務付けられています。
また、安全に問題なく使用できるかを月に1回程度点検し、確認しておくことも大切です。
- 法定点検(年1回)=法律で義務付けられた公的検査
- 保守点検(月1回)=安全性を維持するための実務的な点検
法定点検と保守点検を組み合わせて適切に行うことで、エレベーターの安全性や性能を維持できるため、具体的な内容や違いを確認しておきましょう。
法定点検は建築基準法に基づき年1回の報告義務がある
エレベーターの法定点検(定期検査報告)は、建築基準法第12条に基づき、年に1回必ず実施し、結果を報告する義務があります。
これは、建物の所有者・管理者が負う「法律上の責任」であり、怠ると行政指導の対象となることもあります。
法定点検を行えるのは、一級建築士・二級建築士・昇降機等検査員の資格を持つ技術者のみで、国が定めた検査項目に沿って実施します。
エレベーターが安全に使える状態だと確認したら、建物の所有者か管理者による特定行政庁への報告が必要です。
保守点検の頻度は月に1回程度が一般的
保守点検は日常の運行で発生しやすい摩耗・劣化・異常の早期発見を目的として自主的に行うもので、法定点検と異なり法律上の義務はありません。
しかし、建築基準法では建築設備の維持保全が求められており、エレベーターについても、努力義務として使用頻度に応じた点検の実施が推奨されます。
保守点検は法定点検のように報告義務がないとはいえ専門知識を要するため、基本的には業者に依頼するのが一般的です。
エレベーターの保守点検頻度の決め方

エレベーターの保守点検の頻度は、利用者・回数の多さなどの運行状況と昇降機の種類や建物の状態によって異なります。
基本的には、入居者が多いマンションやオフィスビル、荷物用エレベーター、築年数が古い建物などでは、月1回の点検が基本となるでしょう。
エレベーターの保守点検の頻度を決める上で指標にしたいポイントを3つ、紹介します。
エレベーターの使用頻度
利用者が多い建物や、荷物の搬入が多い施設では、エレベーターの部品の摩耗や劣化が進みやすくなります。
エレベーターの稼働回数が多い場合は、月1回以上の点検を基本に考えると安心です。
エレベーターがある建物の状態・築年数
築年数が古い建物では、エレベーター本体や周辺設備の劣化が進んでいる可能性があります。
特に、15〜20年以上経過した昇降機や湿気・温度変化が多い環境などは異常が発生しやすく、点検頻度を高める必要があります。
エレベーターの種類
エレベーターにも用途ごとに種類があり、それぞれに点検頻度は変わります。
例えば、乗用エレベーターの場合は一般的に月1回程度ですが、1日中稼働しているような荷物用エレベーターは摩耗が早く、点検頻度を増やすことが多くあります。
また、駆動方式がロープ式か油圧式かによっても点検項目や頻度が異なるため、まずは専門業者に相談しながら頻度を決めるのがおすすめです。
エレベーター保守点検の主な内容は?

エレベーターの保守点検では、主に以下の項目をチェックして、安全性を確かめます。
- 機械室の点検:制御盤・配電盤等の動作確認、巻上機やモーターの不具合・摩耗状況の確認等
- 昇降路の点検:昇降路やガイドレール・ワイヤーのゆがみや破損・障害物の有無、動作確認や性能検査等
- かご(乗り場)の点検:ドアの開閉や操作ボタン・表示灯・インターフォンなどの動作確認、照明・換気設備の状態確認等
- 安全装置の点検:非常停止装置やドアロック機構・過速度検出装置等の作動確認
保守点検の内容も理解しておけば、安全に運行する上で必要な項目であると納得ができるでしょう。
機械室の点検
機械室はエレベーターを動かすためのモーターや制御盤、ブレーキ装置など、昇降機の心臓ともいえる部分を担っています。
主に異常音や摩耗がないか、問題なく動作するかなどを確認し、問題なく使用ができるかチェックします。
昇降路の点検
昇降路内のガイドレールやワイヤー、カウンターウェイトなどに、摩耗や変形がないか点検します。
また、昇降路内に障害物がないか確認するのも、安全性を確保する上で重要なポイントです。
かご(乗り場)の点検
人や荷物が乗る部分(かご/乗り場)のドアや表示灯、ボタンなどの動作確認を行います。
ドアの開閉状態や表示に異常がないか、運行中の振動が大きすぎないかなどを細かく調べます。
安全装置の点検
エレベーターには非常停止装置やドアロック機構、過速度検出装置など、多くの安全装置が搭載されています。
これらが正常に作動するかを確認し、異常時の対応ができる状態を維持します。
エレベーターの保守点検は業者選びも重要

エレベーターの保守点検は専門の業者に依頼するのが一般的ですが、安全性に関わる作業のため、信頼できる会社を選びたいと考えるのは当然です。
エレベーターの保守点検業者を選ぶ際に確認しておきたいポイントを3つ、紹介します。
エレベーター保守点検の実績が多いか
エレベーターの保守点検に関する実績が十分にある業者は、信頼性が高いと言えます。
エレベーターの保守点検は建物の種類や築年数、メーカーによっても確認項目が異なるため、経験豊富な業者はその分幅広い対応ができるでしょう。
緊急時の対応や点検記録の共有が可能か
エレベーターは突然の異常が起こる可能性もあり得るため、緊急時にすぐ駆け付けて対応できるかも確認しておきたいポイントです。
また、保守点検の記録や報告書を丁寧に作成し、作業内容をしっかり説明してくれる業者を選べば、管理者の安心にもつながります。
希望に合わせた費用やプランで契約できるか
エレベーターの保守契約には主に、以下の2種類があります。
- フルメンテナンス契約:POG契約より固定費用は高いが、部品交換や調整・清掃などがすべて含まれている
- POG契約:固定費用は抑えられるが、部品交換時や修理対応時は別途費用が発生する
まずは見積もりを依頼し、エレベーターの用途や予算ともすり合わせながら、最適な契約が結べる会社を選びましょう。
エレベーターの保守点検は自分でもできる?

建物のオーナーや管理人など資格のない人でも、日常的にエレベーターの保守点検はできます。
例えば、異音や振動の確認やドアの開閉状態に異常がないか、表示灯は点灯するかなど、利用者が気づける範囲のチェックは日々行えるでしょう。
ただし、昇降路や機械室など専門的な部分での点検や部品交換は、専門業者でなければ対応できません。
年に1回の法定点検も含め、有資格の専門業者による定期点検は、エレベーターを安全に使用するために必須です。
まとめ:エレベーター保守点検は月1回を基本に使用頻度に合わせて行いましょう

エレベーターの保守点検は、月1回の定期点検と年1回の法定点検が基本です。
エレベーターの使用頻度や建物の状態、種類によっても適切な頻度は変わるため、状況に合わせた維持管理が重要です。
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